相続コラム「相続について親に切り出すタイミング」
トチスマ・ショップ熊本中央店店長。村上です
本日のコラムは「相続について親に切り出すタイミング」についてです。
多くのお客様から個別相談のご依頼を頂き、様々なお話を聞いてきましたが
子供世代の方からのご相談は皆さん、本当にこの点について頭を悩ましておられます。
今日は同じくそのような事からお話がスタートした、私がかれこれ5年前からお手伝いしているお客様がようやくお父様に動いて頂けたという事例をご紹介します。
一番最初にご相談頂いたのは約5年前の年末でした。きっかけは「売却査定」のご依頼からで、娘さんからのご相談でした。
こちらは2人姉妹のお客様ですが、お2人とも東京にお住まいです。長女様からのご相談で、「父ももう85歳だが実家でひとり暮らしている。もう高齢だし心配なので引き取ろうと思っているから、売るとした場合にいくらくらいになるか知りたい」というものでした。
年末に帰ってこられていたタイミングで長女様にお会いし、査定金額と売却の流れをお伝えし何度かメールやお電話でやり取りした2か月後、長女様が熊本に来られるという事でしたので、一度お父様にお会いすることになりました。
事前に長女様からは、「父はとにかく自宅にいたい。売るという話をすると話を逸らしたり動揺するので
まずは村上さんを紹介する感じで勧めたい」との要望を頂き、「お庭の倉庫を片づける業者さん」という事でお邪魔させて頂きました。
初めてお会いしたお父様の印象は、物腰もやわらかく、そんな頑固な感じは全くない、穏やかな感じのお父様でしたが、目がお悪いようで確かに一人暮らしだと心配だろうなという印象でした。
私の事を見てほんの少し警戒しているかな?という感じでしたので、なるべくリラックスして頂けるよう、いろいろ雑談をしました。お父様はお酒が好きで、ビールを毎晩飲まれているそうです。私もお酒が好きなので、そんなお話で盛り上がりました。
初回はそんな感じで終わったのですが、やはり私が帰ったのちに「家を売るつもりはない」と
いうようなことをおっしゃったそうで、長女様も「売らないから大丈夫よ」となだめて終わったそうです。
長女様は折を見て、お父様に「東京にこないか?」と投げかけているそうなのですが、お父様は全くその気が無く、困っておられました。
ただ、長女様としてもお父様に万が一の事があっても困るし、でもあまり何度も言うと余計に意固地になってしまっても困るから・・・
という事で本当に慎重にお話を進めておられました。
そんなこんなで3年ほどたった年末の事、長女様が熊本に来られたのですが、
そのタイミングで近くにとても良い施設があったので、お父様と見学に行かれたそうです。
すると、お父様はすごく取り乱してしまって、「早く帰りたい」というような状況になってしまい、結局施設に入れることもあきらめたという事でした。
長女様はお父様が高齢であることはもちろん心配しておられるのですが、お隣の方がいつもお父様の事を気にかけてくれていて、万が一の事があったら家に入ってサポートしたり長女様に連絡してくれたりするそうで、その方にもいろいろご面倒をかけているから・・・
と気にしておられました。
とはいえ、お父様の気が変わる事は無く、それから1年過ぎた日の事、長女様から「父が入院することになった」と連絡がありました。
きっかけは家で転んだ事が原因で足を骨折してしまったとのことでした。
幸い、お体には何事もなく無事で、しばらく入院することになったとのこと。
ただ、長女様はやはりこの機会に転居の計画を進めていこうと決められたそうです。
入院生活は約1か月でしたが、退院後は自宅近くの施設に入る事になりました。長女様がもう一人暮らしをさせておくことはできないと感じられたからなのですがお父様もいよいよ自分もひとりで暮らしていくのが大変と感じられたのか、素直に応じられたそうです。
施設に入られて2か月後、改めて私もお会いしたのですが、とても柔らかな表情をしておられ
長女様曰く「とても親切にしてくれるヘルパーさんがいる」とのことで、居心地も大変良いと感じられているとのこと。
お会いしたのは売却意思の確認の為に司法書士の先生と一緒に訪問したのですが、
長女様から「もう売るってことでいいよね?」という質問に対し、「それでええ」とお答えになりました。
司法書士の先生からも「長女様がそのようにおっしゃっておられますが、改めてお父さんも売るという事でいいんですね?」と聞くと「はい、それで構いません。」とおっしゃり、長女様が「手続きは村上さんにお願いするけどいいよね?」と聞くと、私に対して「よろしくお願いします」とおっしゃいました。
長女様が「なんとかしないといけない」と思われてから約5年、
ようやく心配事が解決に向けて進みだした瞬間でした。
相続に関して問題意識を持っておられる子供世代の方は、理由は違えど恐らく同じような問題をお持ちではないでしょうか?ご両親様がお元気なうちから、相続のお話をするのはなかなか気が引けると思いますし、言い出すのも勇気がいると思います。
しかし、だからと言ってこの問題をそのままにしておくと、いずれ必ず何かしらの問題に直面します。
その問題を解決しなければならないのはご両親ではなく、残された子供世代です。そのようなトラブル事例は私が経験している限りでもたくさんあります。
いきなり事が進むという事はありませんが、だからといって諦める事なく、
少しづつ、ゆっくりで構いませんので根気よく、お話を続けられることをお勧めします。
最初は怒られるかもしれませんし、聞き流されるかもしれませんが、いずれわかってくださる日がやってきます。
そのためにも、早めに相続に関するお話を始めるのがおすすめです。
長いお話になりましたが、最後までお読み下さりありがとうございました。
皆様にとって少しでも参考になれば幸いです。お気軽にご来店&ご相談くださいね